2008年10月25日土曜日

クフラーのドンキホーテ

 このブログのロゴについて書いてみたいと思う。 
 この騎士の絵は,実は私のオリジナルではない。

 私の尊敬する神経生理学者スティーブン・クフラー (Stephen Kuffler) 博士が自らを戯れに描いたものだ。 
 クフラー博士は,自慢のガラス微小電極の剣を片手に ニューロン (神経細胞) に果敢に立ち向かうドン・キホーテに自らをなぞらえている。
 いつか脳のしくみを解明してやろうという,やや無謀ともいえる野心をもったドン・キホーテというわけだ。

 クフラー博士が活躍されていた当時,ガラス微小電極を用いた電気生理学の黎明期だった。
 ガラス微小電極というのは,熱したガラス管を引っ張ってつくる極めて鋭利な電極であり,管の中に電解液をつめて電気伝導性を与えている。
 先端が1ミクロン以下なので,ひとつの神経細胞や筋肉細胞に直接突き刺して,その電気活動を記録することができる。  この技術のおかげで生理学は飛躍的に進歩した。

 顕微鏡下で,とある動物の脳に5本の微小電極を刺入しているところ。 
 顕微鏡の周囲をとりかこむようにガラス微小電極を動かす装置が並ぶ。

 こんにちでは,イメージング技術を使った解析がだんだん主流にきていて,電気生理学は技法としては古典的な手法になりつつある。 大いなる敵に果敢に立ち向かうドン・キホーテであったのだが,いまや時代遅れの象徴になりつつあるのかもしれない。


 クフラー博士がドン・キホーテなら,私はガラス微小電極のライトセーバーを構えたジェダイの騎士の絵でも描こうかな。

 

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