ジョージ・W・ブッシュ氏の半生を描いたオリバー・ストーン監督の映画 『W.』 を観てきた。
ブッシュ政権に対する風刺とか揶揄というのでなく,人間ジョージ・W・ブッシュを描いた,むしろ物悲しさすら感じさせる映画だった。
主人公のジョージ・W.は,品行方正な父や兄とは対照的な,カウボーイ・ハットのよく似合うごく普通のテキサス男であり,とても愛すべき人であっ た。 おそらく実際にそうなのであろう。 そして何よりもジョージ・W. の心の支えだったローラの存在が大きく,一途に彼女を愛し続けたのが印象的だった。 それだけでもビル・クリントン氏よりも好感を抱いてしまう。 もちろ ん一個人として。
強い野心と正義感,そして父に対する反発心を抱いていたジョージ・W.は見事にテキサス州知事となり,そして大統領選出馬を決意する。 この流れ はまさにアメリカンドリームそのものであった。 ただ,彼はさほどに利口な人物ではなく,政治の話よりもフットボールや野球の観戦の方が好きな,ごく普通 の人だった。
この映画を観ていて,私は漢の初代皇帝高祖こと劉邦の ことを思い出した。 ブッシュ氏はまさしく劉邦だと思った。 明るい性格で,一途で,不良ッ気があり,男としての可愛気があり,そして,ちょっと馬鹿なの だ。 馬鹿といってもハーバードでMBAを取得しているぐらいなのだから頭脳は明晰なのだが,大きく抜けたようなところがある。 有能な人材がこぞって手 助けしてあげたくなるような将器のある人だったと思う。 昔の中国や日本だったら,きっと名君になっていたかもしれない。
ただ,残念ながら劉邦 との決定的な違いは,彼をサポートすべく集まった閣僚達があまりパッとしなかったことだ。 そしてリチャード・ドレイファスが演じる副大統領のディック・ チェイニーが,ブッシュ政権を悪い方へ,悪い方へ,と導いていゆく。 そしてブッシュ氏も物事を善と悪でしか考えられない人だった。
そういえば私が渡米を決意したのは,ちょうどブッシュ氏が大統領に決まった頃だった。 そして現在まで,ずっとブッシュ政権の下で生活してきた。 そのせいかどうか,私はブッシュ大統領に対して不思議な愛着がある。 もうじき彼の任期が終了してしまうわけだが,待ちに待った瞬間なのだけど,ブッ シュ氏の無邪気な正義感に満ちあふれた顔が見れなくなるのは,ちょっと寂しい気もしてしまう。
オバマ氏か,マケイン氏になるかわからないが, 「ブッシュ時代の方がまだ良かった」 というふうにならないことを祈るばかりだ。
ブッシュ大統領の半生描いた映画「W」 大統領選大詰めの中で全米公開
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081018-00000514-san-int
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