マケイン氏の演説でイラク戦争に話題が及ぶと, 『栄誉ある撤退 (Withdrawal with Honor)』 という言葉が必ず出てくる。 100年でも1000年でも勝つまでは軍隊を撤退させてはならない,兵が帰還するとき,それは 『栄誉ある撤退』 でなければならない,という。 オバマ氏の主張には,真っ向から対立している。
Atlantic 誌にマケイン氏の戦争観に関する記事があったので,読んでみた。
マケイン氏の家系はまさに軍人家系だ。 祖父は第二次世界大戦で,父はベトナム戦争で,いずれも提督 (Admiral) だったという。
フォレスト・ガンプという映画で,ダン小隊長という人物が出てくるが,なんだかマケイン氏の境遇とよく似ているような気がする。 軍人家系の出てあり,両者ともにベトナム戦争で足に大怪我をする。
ダン小隊長はフォレスト・ガンプが救出してしまうのだけど,撃墜されたマケイン小隊長は戦争捕虜となってしまう。 ここから二人の人生は大きく異なってゆく。 ダン小隊長は苦悩の末に実業家として成功する。 一方,マケイン氏は捕虜として五年間牢獄で過ごした末に釈放され,国家の英雄として称えられ迎えられる。
ベトナム戦争では,アメリカは実に不名誉な形で戦争を終わらせている。
転機となった 『テトの攻勢』 と呼ばれる激戦は明らかに北軍の暴挙であり,戦いとしては明らかに南軍とアメリカ軍の大勝利だった。 しかし米軍の犠牲者がわりと多かったことや,アメリカ大使館が占拠されたことなどネガティブな印象の方が伝わってしまい,アメリカ本国では全く逆の評価のされ方をした。
メディアも世論も反戦一色になってしまった。 せめてあともう少しの時間があれば,南ベトナムは日本や韓国のような民主国家として完全に独立しえただろう,と言われる。 しかしマケイン氏の父のジョン・マケイン・Jr 提督は,あと一歩のところで当初の目的を達成するにいたらなかった。
今のイラク戦争におけるマケイン氏の立場と,ベトナム戦争時のマケイン提督の立場は,酷似している。 イラク戦争でも戦略的には当初の目的を完遂しつつあり,イラクの民主化と国家の安定も目と鼻の先のところまで来ているのだそうだ。 戦争 に時間制限など設けてはならない。 目的が遂行されたときが,それが戦争を終えるときだ。 ここで撤退などというのは愚の骨頂だ,という。 今,イラク派兵が間違いでした,などと言って撤退してしまったら,ベトナム戦争の二の舞になってしまう。 内外における国家の威信は回復し得ないところまで失墜するであろう。 また,イラクはどうなるのか。 反動でおそらくこれまで以上に悲惨なことが起こるだろう。
戦争は,始めた以上は辞めるのでなく何が何でも終わらせなくてはならない,というのがマケイン氏の主張するところだ。 父の轍は踏みたくないに違いない。
マケイン氏の戦争観と は, 『ひとたび戦争を始めたからには,絶対に半端で終わらせるべきではない』 ということだ。 戦争を始めたからには絶対に勝たなくてはならないし,当 初の目的を達成するまでは絶対に辞めてはならない。 負け戦ならいざ知らず,勝ち戦を財政難だからといって途中で放棄してしまったときの損失は計り知れな いという。 つまり戦争とは,国益のために行う外交の一形態であり目的達成が第一であると考えているわけだ。 その為に多くの人が死ぬわけだが。
世界の政治と軍事情勢の裏も表も見てきたマケイン氏にしてみれば,オバマ氏などはリクツでは正しいことを言うけれど何もわかっていない青二才にしか見えないのだろう。 マケイン氏のことを知れば知るほど,辛抱強く待ち続けた徳川家康のことを連想してしまう。 また,『戦の一文字を忘れるべからず』 と言った西郷隆盛氏のことをふと連想する。 いずれも外交と戦争というものの性質を知り尽くした人だ。
オバマ大統領なら 『話せばわかる』 的雰囲気があるが,マケイン氏には無い。
世界の国々にしてみれば,オバマ大統領の方が歓迎されるに違いない。
マケイン氏が大統領になると,アメリカはまた脅威の国となる。
どちらがアメリカにとって国益なのかと考えると,難しい。
日本では,マケイン氏が大統領になることを前提として,麻生氏が総理に就任した。 また,マケイン氏のバックには,ニクソンを中国に送ったキッシンジャー氏がいる。
オバマ氏か,マケイン氏か。 どっちに決まったとしても,アメリカは今の危機を乗り切るんじゃないかという気がする。 世界に多大なダメージを与えて。
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4 週間前
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