2008年11月5日水曜日

The Fall (2006)   ― 落下の王国 ―

 久しぶりにいい映画を観た気がした。
 病院に入院している人生に絶望したスタントマンの男と,5歳の東欧系移民の女の子の間での奇妙な愛情物語。

 男が話してくれる物語を聞きながら,女の子の頭の中で繰り広げられる空想物語と,現実世界とが行ったり来たりする。 物語にはいろんな意味が込め られていて,難解なようで単純であり,単純なようで難解だった。 空想物語の映像はあちこちの世界遺産でロケ撮影したらしいのだけど, 近年稀にみる映像 美の素晴らしさがあった。 単純に映像美を見ているだけでも飽きない。 こういう映画は何度でも観たくなる。

 物語に出てくる仲間達は皆個性豊かな外国人であり, 一方,黒ずくめの悪者達は 『怒った人たち (Angry People)』 と呼んで対比させていた。 そして女の子の家を焼いた人達のことも,彼女は 『怒った人たち』 と呼んでいた。 アメリカで移民労働者 に対する差別や迫害のあった時代背景であり,そこらへんをよく理解していないとこの映画はただのおとぎ話にすぎなくなってしまう。 Americana exotica という学名の蝶々が,この映画のテーマと,アメリカという移民国家を暗示するかのように象徴的に使われていた。 

 女の子役のカティンカ・アンタルー (Catinca Untaru) の演技が,とにかくすばらしい。 演技じゃない部分も多分にあるんじゃなかろうかと思ってしまう程に,いじらしく,可愛らしい。 彼女の愛くるしい顔をもう一度観たいがために,ついまた最初から観てしまう,そんな映画だった。  

 The Fall

 

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