20年くらい前に辰吉丈一郎選手の試合を初めてみたときは,衝撃的だった。
バッタバッタと相手をなぎ倒してゆく日本人選手が現れた,と 思い,興奮した。 当時日本チャンプだった岡部選手を倒した試合は凄かった。 ヘッドスリップしてからの長い左フックがチャンプの顔面をとらえたときは, テレビの前で立ち上がってしまった。 とにかくすごい選手が現れた,と思った。
浪速のタイソンという雷名は,新聞のスポーツ欄の一角で知った。 中学時代は札付きの不良で,しかもケンカでは負けたことがなく,手を焼いた担任の教師がたまりかねて帝拳ジムへ連れていったという。 それだけで既に伝説的だった。
当時,不良だとかツッパリといった風俗の終焉期だっただけに,辰吉という存在は同年代の元不良少年達にとって不世出のヒーローであったように思う。 ダウンしている相手に向かって 『起てや,コラ』 とでも言っているのか,グラブでもっておいでおいでのしぐさをするのが,たまらないくらい魅力的だった。
辰吉氏をみていると, 『ボクシングが好きで好きでたまらない』 という様子が伝わってくる。 リングに立ちたい,生涯現役でいた い,試合をすることに意義がある,という気分が伝わってくる。 今回もそういう気持ちがタイでの試合にこぎつけたのだろう。 重量級ならともかく辰吉氏の ような軽量級選手がで38歳で復活というのは驚異的だ。 相手は決して強い選手ではないが,そんなことはべつに全然かまわない。 辰吉丈一郎は何よりも 自分の為に,ボクシングがやりたくてボクシングをしているのだろう。 観客やカネやベルトの為にボクシングをしているのではない・・・ と言えば,怒ら れるだろうが。
石の拳と呼ばれたロベルト・デュランは50歳を超えるまで現役であり続けたという。 辰吉氏もデュランのように生涯現役でありたいと思っているの だろう。 誰の体でもない,辰吉氏自身の体なのだ。 失明しようがパンチドランカーになろうが,できるところまでボクシングをやり続ければいい思う。 そ れは至極幸せなことだ。
辰吉、復帰戦でTKO勝ち=5年ぶりバンコクで-ボクシング
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081026-00000072-jij-spo
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